【アニサキス症】サバを食べただけなのに激しい腹痛！？【酢では死なない】

はじめに

みなさんアニサキスという「虫」を一度は耳にしたことがあると思います。実はアニサキス食中毒は事例が多く、『令和４年　病因物質別月別食中毒発生状況』によると、国内の食中毒事件は962件発生しています。そのうち、アニサキス由来は約6割の566件です。日本人の食習慣からみて，アニサキス症は古来から存在したと考えられます。しかし、アニサキスが発見されたのは1960年代です。1970年代以降には内視鏡検査の普及とともに、アニサキスの摘出が可能となり、予想外に多数の本症例が発生していることが明らかになりました。今回はそんなアニサキスについて、解説します。

アニサキスはどんな生き物？

アニサキスは線虫の一種です。現在、世界でアニサキス属は9種が確認されており、日本におけるアニサキス食中毒の主要原因はアニサキス・シンプレックス・センス・ストリクト（Anisakis simplex s. s.）という種です。この線虫は長さ2～3cm、幅は0.5～1mm程度で、白くてちょっと太めの糸のような姿をしています。
アニサキスの成虫は、クジラなどの海洋哺乳類の胃内で寄生して生活しています。成虫が産んだ卵は、クジラの排泄物と共に海に放出されます。海中で卵が孵化し、生まれた幼虫はオキアミなどの甲殻類に捕食されます。次に、サケやサバなどの魚類がこの甲殻類を食べることで、幼虫が魚類の体内に寄生します。人がその魚類を食べた際に、胃や腸の内壁にアニサキスが侵入すると、アニサキス食中毒が発生することがあります。

アニサキスによる食中毒の症状

生きているアニサキスが付着した魚介類を生で食べたり、冷凍や加熱が十分でない状態で摂取すると、アニサキス食中毒が発生する可能性があります。アニサキス食中毒の大部分は、「胃アニサキス症」として知られ、アニサキスが胃壁に侵入することにより起こります。稀に、「腸アニサキス症」と呼ばれる腸壁への侵入もあります。胃アニサキス症は、食後数時間から十数時間で症状が現れ、アニサキスが胃壁に侵入することで激しい上腹部の痛みを引き起こします。時折、吐き気や嘔吐といった症状が伴うこともあります。アニサキス幼虫に対する効果的な治療薬はなく、内視鏡等で取り除くか、体内でアニサキスが死滅するまで痛みは継続します。また、アニサキスの持つタンパク質が抗原となって、じんましんなどのアレルギー反応を引き起こすアニサキスアレルギーも発生することがあります。

アニサキスが多い食品

アニサキスは、150種類以上の日本の魚介類に寄生することが判明しており、魚の種類によって寄生率や寄生部位に違いがあります。アニサキス食中毒の主要な原因とされる魚はサバであり、他にもサンマ、アジ、カツオなどに寄生が確認されています。

アニサキス迷信あるある

調味料では死なない

酢、塩、しょうゆやワサビはアニサキスに対して効果がなく、特に酢ではアニサキスが活発になることがあります。アニサキス食中毒で最も報告の多い魚はサバで、そのうち6割が「しめサバ」に関連しています。

よく噛めば大丈夫。ではない。

アニサキスの体は滑らかで丈夫であり、細い糸状をしているため、噛み切るのは非常に難しいです。実際に噛み切ろうとすると、何十回も噛む必要がありますが、これは現実的ではありません。

具体的にどうすればいいの？

• 魚を丸ごと購入する場合は、しっかり冷やして持ち帰り、すぐに内臓を取り除くことが大切です。また、内臓周辺の腹身（ハラス）を除去することも効果的です。
• 切り身や刺身の場合は、目で確認してアニサキスを取り除くことが重要です。解凍した魚に関しては、アニサキス食中毒のリスクは低いです。
• アニサキスは、マイナス20℃で24時間以上の冷凍または60℃で1分以上の加熱によって死滅します。
• 魚の内臓は生のまま食べないように注意しましょう。

参考文献

厚生労働省　アニサキスによる食中毒を予防しましょう
国産水産物流通促進センター　アニサキス食中毒の予防対策
国立感染症研究所　アニサキス症とは
厚生労働省　４．食中毒統計資料